わが子をピアノで不幸にしないためのアドバイス その1

お子さんをピアノ教室に通わせていらっしゃるご家庭におかれましては、「毎日ピアノを練習すると約束したのにピアノを練習しない」という類のことについて、親御さんがお子さんに対して苦言を呈されるのは一向に問題ないと思います。

しかし、お子さんの演奏内容や練習内容について、親御さんが頻繁に苦言を呈されるのは、お子さんからピアノに対する興味を遠ざける結果になっていまうのではないか、ということを感じます。

ピアノ教室というところは、ある意味でお子さんに対して「NO!」を突きつける場所です。

ピアノ教室に行けば、お子さんは「ここができていない」とか「あそこが練習が足りない」といったことを言われるのです。

お父さま、会社では上司に叱られ、顧客からはクレームをつけられ、その上、家に帰っても女房から「給料が安い」とか「子供の面倒をみてくれない」とか「少しは家のことも考えて」とか、そのように言われてばかりいたら、頑張って働く気になるでしょうか。

お母さま、お姑さんはともかくとして、亭主や子供から「お母さんの作るご飯はまずい」とか「掃除の仕方がなっていない」とか「洗濯物のたたみ方が下手だ」とか言われてばかりいたらどうでしょうか。

これは、子供についても同じようなことが言えるのではないでしょうか。

ピアノ教室で「NO!」を突きつけられて、さらに家に帰ってきても、大好きなお父さんやお母さんから「NO!」を突きつけられて、それでもなおピアノを頑張るというお子さんが果たしてどのくらいいるのか、私には正確な数字はわかりませんが、おそらく極めて少数なのではないでしょうか(そういうお子さんは本当にピアノが好きなのでしょう)。

本当にご自分のお子さんがダメだと考えていらっしゃるのであれば、初めからピアノ教室になど通わせないはずです。

「うちの子はきっとできるようになる」という希望があるからこそ、ピアノ教室に通わせようという気持ちになられたのではないでしょうか。

お子さんの練習している姿を見て「できていない」とか「下手だねえ」といった類の言葉を思わずお子さんに向かって言ってしまうのも、「うちの子はきっとできるようになる」という希望があるからこそではないでしょうか。

だとするならば、「できていない」とか「下手だねえ」という類の憎まれ口は全てピアノ教室におまかいただいて(ある意味ではピアノ教室というのは憎まれ役として存在しているのかもしれません)、ご家庭では「すごいねえ」「この間よりも上手になったねえ」という言葉をかけてあげるというのはいかがでしょうか。

大人の目から見ていると「どうしてこんなことができないの」と、もどかしいことこの上ないお気持ちはわかりますが、子供は子供なりに自分のペースで一歩一歩前進しようと努力をしているのです。

私自身のことを振り返ってみますと、最初から今と同じようにできたわけではなかったことを思い出します。

何度練習をしてもできるようにならなくて悔しさのあまり泣き出したり、練習をしなくても一度でできるようになって嬉しかったりと、喜怒哀楽を一つ一つ乗り越えての今というものを痛感します。

すぐにできるかどうかということが問題なのではなく、すぐにはできないことも、あきらめずに時間をかけて一生懸命取り組んでいけば、できるようになるんだという体験をさせることが大切なのではないでしょうか。

子供が自分の力で進もうとしている姿は、どこかぎこちなく、見ている側としては危なっかしくてハラハラさせられますが、それを暖かい目で見守ってあげるということも必要なのではないでしょうか。

何でもかんでもほめるのは、子供の発展・向上にとってあまり好ましいことではないことなのかもしれませんが、何でもかんでも貶してしまうことも、同様ではないでしょうか。

子供をピアノ教室に通わせたからといって、ご家庭までがピアノ教室になる必要はありません。

子供にとって、自分の一番のファンは、お父さん、お母さん、あなた方です。

お父さんやお母さんがファンになってあげなくて、他に誰がファンになってくれるというのでしょう。

どうぞ、小さなピアニストのファンとして応援してあげてください。